楽曲情報

【楽曲情報】El Tango de Roxanne | “Moulin Rouge” Soundtrack

映画『ムーラン・ルージュ(Moulin Rouge!)』(2001年)に登場する楽曲「El Tango de Roxanne(エル・タンゴ・デ・ロクサーヌ)」は、情熱と絶望が入り混じる、非常に印象的なシーンで使用されるミュージカル・ナンバーです。

この曲は映画の中でも特にエモーショナルで力強い場面を彩る名シーンのひとつとして、私の記憶に残っています。


曲の概要

「El Tango de Roxanne」は、映画『ムーラン・ルージュ!』(2001年)のサウンドトラック第12曲に収録された、濃密な感情が交差するタンゴ調の名曲です。

元々は1978年にリリースされたロックバンド The Police のヒット曲「Roxanne」をベースにした楽曲です。映画ではこのロックナンバーを、 アルゼンチン・タンゴのアレンジ に大胆に再構築し、激しい情念と狂おしい嫉妬を表現する場面に使用しています。

映画内で歌うのは、エワン・マクレガー演じる詩人クリスチャンと、酒に溺れたアルゼンチン人タンゴダンサー。タンゴのリズムに乗せて、「ロクサーヌ(サティーンの象徴)」が他の男に身を委ねることへの 激しい嫉妬と苦悩 が描かれます。

演奏・歌唱を担当したミュージシャン

Ewan McGregor(ユアン・マクレガー) – クリスチャン役として歌唱&演技

José Feliciano – ソロ・ヴォーカルで情熱的なコーラスを担当

Jacek Koman – “The Narcoleptic Argentinean”(アルゼンチン人ダンサー)役でのスパイシーなパフォーマンス

また、映画ではNicole Kidmanも舞台上で演技していますが、歌唱パートは上述の3人が主役です

作曲・編曲クレジット

原曲の“Roxanne”(The Police)はスティングの作詞・作曲

アルゼンチンのマエストロ、Mariano Moresによるタンゴ曲“Tanguera”(1955年作)が融合されています。

映画版のスコアは、バズ・ラーマン(Baz Luhrmann)監督とクレイグ・ピアース(Craig Pearce)による脚本共同執筆・アレンジで構築

プロデュース/編曲には音楽家Craig ArmstrongやMarius de Vriesなども参加しています。

サウンドトラック情報


 



アルバム名:Moulin Rouge! Music from Baz Luhrmann’s Film

収録:トラック12「El Tango de Roxanne」

作詞・作曲クレジット:“Roxanne” – スティング

“Le Tango du Moulin Rouge”(邦題扱い) – Mores/Luhrmann/Pearce

楽曲の構成と演出

この曲は以下のような構成で展開されます。

  • The Policeの「Roxanne」の歌詞をタンゴ調で再解釈

  • アルゼンチンタンゴの要素を加えた重厚なアレンジ

  • ミュージカルの「舞台と現実」が交錯する演出

  • サティーンとクリスチャン、それぞれの視点が交互に描かれる

特に印象的なのは、クリスチャンの心の叫びが爆発するようなクライマックスと、激しいタンゴの踊りによって表現される激情。音楽、演技、カメラワーク、照明が一体となり、愛と嫉妬、裏切りと欲望の極限が描かれます。

サウンド:歌・タンゴ・ヴァイオリン・演技が融合した、極限の激情シーンを構成

この曲は、原曲への敬意を払いつつ全く別の文脈で再構築された傑作であり、映画の中でも最高潮とも言えるエモーションを体現しています。

楽曲の特色

  1. 歌詞の冒頭は「激情、嫉妬、怒り、裏切り…」というナレーションで幕開けし、ドラマの緊張感を高めます

  2. タンゴのリズムに“Roxanne”のコール&レスポンスの歌詞が絡み、シーンの情緒を音楽的に増幅

  3. 中盤では“Come What May”のメロディが静かに重ねられ、劇的クライマックスに向かって音楽的爆発へ

  4. 最後の盛り上がりでは、ヴァイオリンやダンサーの足音、打楽器的な演出が加わり、「愛の破壊的な衝動」を視覚的にも聴覚的にも強調

このシーンの意味

「El Tango de Roxanne」は、愛の純粋さと同時に、それが持つ破壊的な力を描いています。
クリスチャンが感じる嫉妬と絶望は、愛する者を「失うかもしれない」という不安から生まれるもの。
同時に、愛とはコントロールできない感情であり、時には狂気へと突き動かすこともあるという、人間の深い感情を音楽とダンスで体現しています。

映画における位置づけ

『ムーラン・ルージュ!』は「ジュークボックス・ミュージカル」と呼ばれるジャンルで、既存の名曲を大胆に再構成して物語に組み込んだ作品です。


「El Tango de Roxanne」はその中でも特に際立ったアレンジのひとつで、クラシックロックとタンゴ、ミュージカル演出を融合させた革新的な表現として高く評価されています。


 



まとめ

「El Tango de Roxanne」は、単なるカバーではなく、元の楽曲を再構築し、愛と狂気、欲望と破滅を描いた壮絶な舞台表現となっています。
映画『ムーラン・ルージュ!』を象徴する一曲であり、視覚と聴覚を通して観る者の心を揺さぶる、芸術性の高い音楽シーンです。